「俺ね、凍死するんじゃないかってマジで考えたんだわ」
「こっちは雪降らないぞ」

 アラタは、しっかりそう指摘した。日焼けが目立つこの大きな彼は、寒さには慣れない場所から来ているのだろうか、と、そんな事をチラリと考えた。

          ◆◆◆

 大浜が予約したホテルは、二つ向こうの駅にあった。シングルタイプながら室内は広くて、床は直で座っても問題なさそうな素材で覆われていた。

 一緒に書類を確認し、必要な記入欄にそれぞれペンを走らせて印鑑を押した。それから早速と言わんばかりに、大浜が下に買い漁った食べ物を並べて「じゃーん!」と缶ビールも袋から取り出して見せてきた。

「『オリオンビール』はなかったから、『淡麗生』にしました!」
「なんで敬語?」

 そんな銘柄あったかなと思いながら、アラタはひとまず心も込めず彼にこう言い返す。

「俺、未青年だけど?」
「ははは、飲み慣れてる奴が何言ってんだ」

 大口を開けて笑った彼が、そう言いながら目の前に缶ビールを置いた。