入学届けを送った後日、父が記載した書類を持って大浜が現れた。以前会った時と違って、季節はすっかり冬だ。彼は大きくてガッチリとした身体に、随分厚着をしていた。

 なんでいんのと口にしそうになったアラタは、遅れて「あ」と思い出した。

「わざわざ保証人の欄を書くために、またこっちに来たのか……?」
「おぅ。二回目だけどまた迷子になったぜ!」

 堂々とそう言い放たれて困惑した。それ、自信たっぷりに言う事じゃないだろうと思って見つめていると、「時間あるか?」と問われた。

「俺もさ、お前の親父さんから書類をパッと受け取っただけなんだわ。あいつ仕事入ってたし、『ウチにはあげんぞ』『さっさと行ってこい』って蹴飛ばされて」

 ぺらぺらと聞き慣れない訛り口調で話す大浜は、昨日のコメディ番組の感想でもするみたいに明るい表情だ。寮へ戻っていく数人の後輩男子生徒たちが、敷地の門をくぐりながら「え」という表情を浮かべてチラチラ彼の方を見ていた。