昼食時間はとっくに過ぎていたので、広い店内に客は数える程度しかいなかった。少しレトロ風の店内は、どこかほっと落ち着ける優しい色合いをしていた。

「さっきも言ったけど、ほんと電車の乗り方が分からなくてさぁ。案内板と睨み合ってもちっとも理解出来ねぇし、バスも普段利用しないから見方もさっぱりだし、まいったもんだ」

 大浜は、食事を豪快に食べ進めつつも、仕草や表情を交えて話し続けた。彼の前には巨大ハンバーグ定食、単品のエビグラタン、モッツァレラチーズのバジルピザが三切れ、小皿に入ったトマトサラダが並んでいて、お喋りだけでなく食事量も多かった。

 アラタは適当に相槌を返しながら、彼の赤く日焼けした頭髪の逆立ち具合を眺めたりしていた。ハンバーグカレー定食だけで、お腹がいっぱいになった。

「それにしても、あいつも老けたよなぁ」

 注文したメニューを全てペロリと完食した大浜が、爪楊枝で前歯をいじりながら、ふと思い出した様子で呟いた。