好きだ、好きだと僕は泣いた

「この子、どうしたのかしら……」
「風邪を引いたんじゃないか?」

 リビングのソファで経済紙を広げていた父が、いつもある眉間の皺を薄くしてそう心配した。彼方と良く似た顔をした彼のハンサムな表情は、普段よりもやや柔らかく変化する。

「俺の方でみておくから、何か身体が温まりそうな物を出してもらえないか?」

 父はそう言って、反論もせず素直にキッチンへと向かう母を見送る。それから、ドライヤーを終えた彼方へ目を戻した。

「どこか痛いところや、気分が悪いといったところはないか?」
「ううん、特にないよ」
「そうか……。とりあえず、こっちにきて座りなさい」

 そう告げてすぐ、自分の息子が素直にソファに座ったのを見て、父はいよいよ心配になったような顔をした。そわそわと落ち着かない様子で「少し待っていなさい。確か、薬があの辺に……」と言いながら立ち上がり、薬がしまわれている棚へ探しに向かった。

 どうやら、雨のせいで体調がすぐれないと誤解されたらしい。しばらく身体を温かくされた後、早い時間だというのに、消化の良い夕食メニューが母によって組み立てられた。