好きだ、好きだと僕は泣いた

 そんな中、彼方は椅子に腰かけて鞄に荷物を詰め始めた。椅子と机に腰かけていた四人の男子生徒の一人が、羨ましそうに彼女達を見やった。

「あーあ、女子はいいよなぁ。俺らなんて『歩いて帰って来い!』の一言だもんなぁ」

 そううんざりしたように呟いた。すると、机に座っていた男子生徒が、教壇で日直日誌をつける二人のクラスメイトから、彼へと視線を移して「でもさ」と言って八重歯を覗かせて笑った。

「雨の日って、俺は好きだよ。晴ればっかりじゃつまらねぇし、たまには濡れて帰るのも悪くないだろ?」
「お前はほとんど鞄に何も入ってねぇからじゃんッ」

 長身の男子生徒が呆れたように言って、やりとりを聞いていた生徒達が笑い出す。
 雨の日が良いといった男子生徒は、全く共感を得られない友人達を前に唇を尖らせた。「それもあるけどさぁ」と反論しかけて、ふと、唯一笑っていない彼方を目に留めた。

「なぁ江島。お前は雨、好き?」

 そのまま躊躇なく話しかけた男子生徒の視線の先を、教室に残っていた生徒達が見やった。