好きだ、好きだと僕は泣いた

 その時、開いた窓から風が吹き込んできて、ぱらぱらっとノートをめくり上げた。

 彼女が「うわっ」と言って、咄嗟のようにして頭を押さえる。それが視界の端に映る中、彼方は「やれやれ」と疲れたようにノートのページを元の場所に戻した。

「……うん、今、ちょっと分かったかもしれない」

 風が止み終わって、ふと『メグちゃん』が呟く声が聞こえた。

 彼方は「何が?」と眉根を寄せて振り返った。そこには、驚いたようにこちらを見ている彼女がいて、その表情が唐突に笑顔に変わった。

「『かなたくん』の言う通りかも。世界って、本当はきらきらとしたものが沢山溢れていて、とてもキレイなのかもしれないね」

 優しく細められた目が、真っ直ぐこちらへ向いている。その笑顔はあまりにも柔らかで、彼方はどうしてかパッと目をそらしてしまっていた。

 このまま絵描きに戻ってしまおうと思っていたのに、どうにも進まず椅子に背をもたれた。息を吐き出しながら目をやった先には、日差しの明るさにぼんやりと浮かび上がっている教壇があった。心地よい風が吹くたびに、近くに飾られている造花が心地よさそうに揺れている。