好きだ、好きだと僕は泣いた

「いつも一人でいるから、寂しくないのかなぁって……それに毎日何かを描いているみたいだけど、えぇと、何を描いているのかなぁとか……?」
「僕は誰かの都合やら、お喋りやらに振り回される方が嫌なんだ。煩わされたくなくて一人でいる。絵は描きたいものを、ただ描いているだけだよ」

 彼方は片眉を上げ、俯いたままの彼女にぴしゃりと言い返した。きつめの口調になってしまったのに、彼女は引き続きもじもじとしていて、まだ話し足りない様子だった。

「えっとね、その、いつも美術の本とか読んでいるでしょう? いつもね、あの、たまたま見かけるたびそうだから……『絵描きさん』になりたいの?」
「そんなんじゃない。ただ描き方や筆の使い方で、こうも変わるのかと興味があって読んでいるだけだ。それに載っている作品を見るのも、嫌いじゃない」

 そう答えたら、女の子がチラリと目を上げてきた。しばし、他のクラスメイト達がいない休み時間の教室で、少し離れた席から互いに見つめ合った。