好きだ、好きだと僕は泣いた

 知られない程度に見ているつもりだった。けれどお返しなのかなんなのか、その女の子がチラチラと観察するような目を向けてくるのが増えた。気付いて振り返ると、慌てたように視線をそらされてしまう。それが毎日に続くと、さすがに集中力を欠かれて少し苛々した。

「君、何か僕に訊きたい事でもあるのかい」

 ある日、チラチラと視線を送って来る『メグちゃん』に、彼方は振り返りざま不機嫌な声で尋ねた。すると彼女は、ビクッとして慌てて目を落として縮こまる。

「あの、その、ごめんなさい……」

 そのまま、消え入りそうな声で謝られた。

 苛々しそうになった彼方は、父から言われていた「短気なところは直しなさい」という言葉を思い出して自分を落ちつけた。夫婦喧嘩をすると怒涛のように物を言う母のようにはなりたくないとも思っていたから、深呼吸を挟んでからこう続けた。

「……僕は怒って言ったわけじゃない。いきなり謝られても困るというか……ただ、声もかけないままチラチラ見られ続けるより、聞きたい事があるならハッキリ尋ねてくれた方がいい」

 何か言いたい事があるのならどうぞ、と促したら、『メグちゃん』は膝の上に置いた手をもじもじとさせて「あの、その」と臆病な声で言った。