好きだ、好きだと僕は泣いた

 ゆっくり席を立ち、いつも通りの空気に戻ったクラスメイト達の間を通り過ぎた。教室を出ると、沢山の生徒が行き交う廊下で歩みを止めて、二組の教室がある方向へ視線を向けた。

 廊下を曲がったところに、二組の教室はある。
 その曲がり角の向こうを想像して、今は珍しく静かであるように感じた。

 普段は、仲良しクラスだといわれている二組の生徒達の大きな声が飛び交い、ダンス部を結成した女子生徒達が音楽を流し始める時間なのに、そんな騒がしさがこちらまで何一つ伝わってこないでいる。

 そういった気分になれないでいるのだろうか。そう想像してしまい、彼方は表情を曇らせた。美術室へと向けて歩き出したその足は、ひどく重い。

 僕はきっと、恵とはもう会えないのだろう。

 夏休み最後の日、正門で別れた時からあった予感が、彼方の中にじわじわと広がっていた。それは九月に入ってから繰り返し予感し、気付かない振りをしていたものだった。

 美術室へと向かいながら、「ここにいればいい」と言った自分の言葉を思い返した。そして、そう言った自分が「ここにいて欲しい」と思っていた事にも気付いて黙り込む。