またしても作業を中断されて、彼方はうんざりした表情で目の前にいる彼女を見る。

「唐突になんだ、わざわざ指を突き付けて断言しないでくれるかな」
「いいえ、ハッキリ言わせてもらうわ江嶋彼方《えじまかなた》君。今こんなに捻くれていたら、後が大変よ。今のうちに真っ直ぐになった方がいいわ。思春期に入ったら、絶対困った事になるんだから」

 恵は、とてもお喋りな女子生徒だった。挨拶に来た日から、午後三時にやって来ては一方的に話し、何枚か写真を撮って勝手に満足して出ていく。毎日のようにそれが続けば、道中の散歩コースにでもされているかのようだと彼方に感じさせた。

 出会って五日目の金曜日、まるで美術室が自分の部室のように居座り出した。向かい側に椅子を引っ張ってくると、何食わぬ顔でそこに腰を降ろしてカメラをいじりだす。

 何事も無視してきた彼方だったが、椅子を引き寄せる恵を思わず顰め面で見やった。