そこに、たった一人の女子生徒を捜そうとしている自分に気付くたび、くしゃりと目を細めた。無関心とはいえ、同じ学校で過ごす少年少女の声を聞き分けられないわけではない。
「宇津見さんが二組なのは、知っているかな」
テスト前日、校舎から出ようとしていたところで二組の担任であり、写真部顧問でもある秋山に声を掛けられた。口調にはためらいが滲んでいて、どこかぎこちなかった。
「――知っていますよ。彼女は、二年二組の生徒なんでしょう」
彼方は一度立ち止まって、表情も向けないままそう答えた。物言いたげな秋山が、決心でもしたかのように口を開こうとした時、その続く言葉を拒絶するように歩き出していた。
二組には恵がいる。
きっといつものようにカメラを首からさげて、唐突にシャッターを切っては「にしししし」と笑う彼女がいるのだろう。ちっとも大人しくなんかなくて、元気たっぷりな女子生徒。
彼方は歩きながら、ずっと想像している『彼女のいる光景』を思った。実は九月の第一週にでも、何度か会いに行く事を考えたりもしていた。
「宇津見さんが二組なのは、知っているかな」
テスト前日、校舎から出ようとしていたところで二組の担任であり、写真部顧問でもある秋山に声を掛けられた。口調にはためらいが滲んでいて、どこかぎこちなかった。
「――知っていますよ。彼女は、二年二組の生徒なんでしょう」
彼方は一度立ち止まって、表情も向けないままそう答えた。物言いたげな秋山が、決心でもしたかのように口を開こうとした時、その続く言葉を拒絶するように歩き出していた。
二組には恵がいる。
きっといつものようにカメラを首からさげて、唐突にシャッターを切っては「にしししし」と笑う彼女がいるのだろう。ちっとも大人しくなんかなくて、元気たっぷりな女子生徒。
彼方は歩きながら、ずっと想像している『彼女のいる光景』を思った。実は九月の第一週にでも、何度か会いに行く事を考えたりもしていた。