どんな作品が完成するのか、分からない方が確かに面白いだろう。彼方は提案を受け入れる事を伝えるべく、無表情ながらしっかり頷いてみせた。

「分かった。僕も頑張るから、君も頑張れ」

 そう答えたら、どうしてか恵が一瞬だけハッとした。目元を少しだけくしゃりとすると、そうしてしまった事を隠すみたいに「にしししし」と唐突に笑った。

「うん。私も頑張るよ」

 そう答えた彼女が、だから偵察するのも無しだからね、と冗談のように口にしてきた。

「いつも部室に突撃してきたのは君だろう。僕は、そんな事はしないぞ」
「いや~、もしかしたら『写真部』の方を覗きに来るんじゃないかと思って」
「僕はどれだけ信用がないんだ?」

 顰め面を返してやったら、彼女が続く説教から逃げるような自然さで「じゃあまたね!」と元気よく手を振って、パタパタと小走りで去っていった。

            ◆◆◆

 日曜日を挟んだ翌日、月曜日に新学期が始まった。

 夏休み明け初となる授業を受けている間も、彼方の頭の中には絵の構図の事が大半を占めていた。いつものような気分気ままな走り描きではなく、きちんとした作品とするなら、そこから考えなくてはいけないと思っていた。