「でも、花のように可愛らしくって言ったのに、これはないんじゃない?」

 言いながら唇を尖らせて、強がるみたいにチラリと可愛らしく睨みつけてくる。彼方は、喉元に小さな刺が刺さったような違和感に包まれたまま、どうにか普段の調子で彼女にこう言い返した。

「そのままの君を描くと言ったじゃないか」
「確かにいつもの私だけど、少年っぽくて大人しくなさそうな女の子に見えるのよ」
「君は大人しくなんてないだろう。人の部室を、勝手に休憩所みたいにする子は他にいない」
「うっ、それを言われたら返す言葉がないわね……」

 絵の中には、二つ結びの髪をした一人の女子生徒が描かれている。今にも「にしししし」と声を上げそうな無邪気な笑みを浮かべた少女が、水彩画に彩られて浮かび上がっていた。

 恵が手に持ったそれを、じっくりと眺めた。まるで目に焼き付けるみたいだった。

「うん、すごく良い絵ね」

 しばらく絵を眺めていた彼女が、ぽつりとそう呟いた。窺うようにチラリと上目に見つめ返してくる。