「私はもう終わっているから大丈夫! あなたの方こそ、どうなの? お土産を食べる暇はあるの、ないの?」
「十分にある」

 甘い物は嫌いじゃない。彼方は真面目な顔で答えると、その土産袋を受け取った。
 それは想像していたよりもずっしりと重かった。つい、顔を顰めてしまう。

「一体何を買って来たんだ? 軽々と片手に持っていた君が信じられない」
「色々と買ったの。あ、私が食べる分も入れていたんだった」

 今になって思い出した様子で、彼女がパッと表情を明るくした。まるでここに来るまでは別の事をずっと考えていて、気が回らなかったみたいな様子だった。

「あなた、お昼ごはんはまだでしょう? なら、一旦お菓子タイムにしようよ!」
「別に構わないけれど、食べる時に写真を撮るのはやめてくれ」
「それは聞けないお願いですなぁ」

 彼女は妙な口調でそう言って、悪戯をする前の子供のように歯を見せて笑った。

 常にカメラを持ち歩いている恵は、初めの頃は絵を描く姿と、窓の外の生徒達を撮っていた。しかし、最近は彼方が何気なく振り返った時や、休憩中も唐突にシャッターを切る事があった。