恵はお喋りだ。彼女があんなに話すから、こちらも少なからず話し癖がついてしまったのだろう。これから絵を描くんで帰ってください、と教師達に出ていくよう促した。
一人になったところで、スケッチブックを手に取って窓の手前に椅子を置いた。時々強い日差しが隠れる空をしばらく眺めた後、何も考えないままそこから見える風景を描いた。
外からは、生徒達の声や物音が聞こえてきていた。
ふと、向こうに見える運動場で、例の野球部員の『哲朗』の姿が目に留まった。
頑張っているんだな、と中学生にしては小さな彼を見てそう思った。ふと、それを自覚してスケッチブックを落としそうになった。誰を気に掛けるような性分ではないし、もしこんなところを見られたら恵に「にしししし」と笑われるに決まって――。
そう思った彼方は、そうやって誰かの目を気にしている自分に唖然とした。彼女が雨対策でトレパンを置いていったのも意味がなかったなとも思って、ますます自分が分からなくなる。
一人になったところで、スケッチブックを手に取って窓の手前に椅子を置いた。時々強い日差しが隠れる空をしばらく眺めた後、何も考えないままそこから見える風景を描いた。
外からは、生徒達の声や物音が聞こえてきていた。
ふと、向こうに見える運動場で、例の野球部員の『哲朗』の姿が目に留まった。
頑張っているんだな、と中学生にしては小さな彼を見てそう思った。ふと、それを自覚してスケッチブックを落としそうになった。誰を気に掛けるような性分ではないし、もしこんなところを見られたら恵に「にしししし」と笑われるに決まって――。
そう思った彼方は、そうやって誰かの目を気にしている自分に唖然とした。彼女が雨対策でトレパンを置いていったのも意味がなかったなとも思って、ますます自分が分からなくなる。