いつものように絵を描いていても、不意に手が止まったりした。そのたび六個の机が長方形に並んだそこをチラリと見て、写真が一枚もない様子をしばらく眺めた。

 そこにあるのは、彼女が最後に来た数日前の月曜日、写真集へ載せる候補案からようやく外した写真達を詰めた箱だった。いつも腰かけていた椅子には、雨が降った時に備えてトレパンの上下が置いてある。

 写真集の件で、出版社にでも行っているのだろうか。それとも、普段顔を出す教師達もいないから、とうとう仮の部室でも見つかってそこに入り浸っているのか……?

 でも興味もない事だと、彼方は一日目も二日目も、それを頭から追い出したはずだった。

 だが一人の日々が続いて三日目、突然集中力が切れたように立ち上がった。

 そのまま美術室を出て、気付いたら職員室へと向かっていた。遠慮もせず戸を開けたら、強い冷房の空気が顔に当たって、そこにいた数人の教師達がこちらを見て目を丸くした。