「分からない、……僕は、きっとそんな感情を持ち合わせていないんだ」
そのまま本心を口にした。普段だったら『別に』とそっけなく言う。たったそれだけで終わるというのに、どうしてか今の彼女に対してはとても失礼になるように思えた。
「昔からそうだった。僕には、好きだと呼べるものがよく分からないんだ。僕は理解出来ないまま絵を描き続けていて、それは胸や頭の中のごちゃごちゃとしたものが不思議と止まってくれるからで…………どうして『描かなかったら』胸がざわざわするのかも分からないのに」
描いている間は無心でいられる。でも、描いたらまた正体の分からない小さなざわつきを覚えるのだ。一体それがなんであるのか、自分でずっと考え続けている。
そう思いながら見つめ返したら、にしししし、と恵が無理やり作ったみたいな笑みを浮かべた。
「急に変なこと言ってごめんね。私が人を好きで、興味を持っていると話したかっただけで……――」
そのまま本心を口にした。普段だったら『別に』とそっけなく言う。たったそれだけで終わるというのに、どうしてか今の彼女に対してはとても失礼になるように思えた。
「昔からそうだった。僕には、好きだと呼べるものがよく分からないんだ。僕は理解出来ないまま絵を描き続けていて、それは胸や頭の中のごちゃごちゃとしたものが不思議と止まってくれるからで…………どうして『描かなかったら』胸がざわざわするのかも分からないのに」
描いている間は無心でいられる。でも、描いたらまた正体の分からない小さなざわつきを覚えるのだ。一体それがなんであるのか、自分でずっと考え続けている。
そう思いながら見つめ返したら、にしししし、と恵が無理やり作ったみたいな笑みを浮かべた。
「急に変なこと言ってごめんね。私が人を好きで、興味を持っていると話したかっただけで……――」