結局のところ、人に興味を持っているのも好きなのも君の方じゃないか、と反論しようと思っていたのに言葉が引っ込んでしまう。

 言いたい事から一歩身を引いて、話しているようにも感じた。それが何かの暗号のように思えて、彼方はちらりと彼女を盗み見た。

 写真を眺めている恵は、どちらともとれない表情で目を細めていた。しかし、ふっと視線に気づいたように顔を上げる。そして目が合ってすぐ、何かを誤魔化すみたいにぎこちなく微笑みかけられた。

 不意に胸底で、違和感に似たものが静かに波打つのを感じた。ざわり、とそれが胸底を撫で上げる。とても焦燥するような何かに、らしくなく冷静さをゆすぶられるような気がした。

「あなたも彼らが好きで、きっと誰よりも強く興味を持っているのよ」

 こちらを強く見据えたまま、恵が困ったような笑みでそう告げてきた。
 そうだと言って、と、彼女の揺れる瞳が言っているような気がして――そんな錯覚に彼方は視線をそらした。室内に響き渡る雨音の沈黙に、何か言わなければと思って息を吸い込む。