「君の反応がまいち分からないんだが、良いように変わったのなら、それでいいじゃないか」
「まぁ、うん、それはそうなんだけど……」

 恵は、ぽりぽりと頬をかいて椅子に座り直した。思ってもみなかった感想を聞いたのようだった。数秒ほど手をもじもじとさせ、それから写真にそろりと手を伸ばして引き寄せた。

「撮った写真を見せると、こんな時もあったなぁって、アユカちゃん達は喜んでくれるの。私の中にも彼女達の中にも、同じ刻(とき)や思い出が残っているのって素敵だなぁと思って」

 小さくなった声が消えて、窓を叩く激しい雨音だけが鈍く響いた。

 それで写真部を立ち上げたのだろうか。お喋りな彼女が、こうして中途半端に黙り込むのは少し珍しく感じたものの、写真選びに悩んでいる事を考えて写真へと目を戻す。

「爺臭いって言われるかもしれない。でも私は、流れて行く時間も、その中にいる彼らも大好きなの。……私は覚えていたいし、覚えていて欲しい」

 そう続けられた言葉に、どこか違和感を覚えた。