聞き飽きた台詞だ、と返してやるもりだったのに出てこなかった。どしてか彼女がいる風景を眺めてしまい、眉間の皺も忘れて眺めていると、頭を抱えていた恵と視線がぶつかった。

 ふと、恵がわたわたとし出した。彼方が疑問を伝えるようにチラリと眉を寄せてみせると、彼女は「実はね」と唐突に言葉を切り出してきた。

「載せたいものというか、その、テーマは決まっているのよ……?」
「ふうん」
「あっ、その目、信じてないわね」
「だってさんざん悩んで、その相談でおしゃべりに付き合わせて先生達を困らせていただろう。今日は、とうとう僕まで引っ張り込まれた」

 ズバリと指摘を返してやったら、彼女が「うっ、それは申し訳ない……」と言った。それでも写真集の全体的なイメージが固まっているのは確かなようで、その計画とやらを話し始めた。

「テーマは本当に決まっているのよ。いくつかに章を分ける感じかしら。まずは家族でしょ? それからアングルが近所に回って、それから学校に移るの」