じゃあ次に回せばいいじゃないか、と出かけた言葉を彼方は飲み込んだ。

 彼女がこれから出そうと思っている写真集は、きちんと出版会社で仕上げるものなので金額は安くないだろう。お金を出す彼女の両親の事を考えると、それ以上強くも言えなかった。

「満足いくまで悩めばいい」

 苛々してそう言葉を掛け、彼方は彼女の向かいで頬杖をついた。

 六個分の机を繋げたテーブルには、はじめの頃よりも増えた写真が山となっていた。一体どれが『いい写真』なのかさっぱり分からなかったが、それでも一枚一枚目を惹くのも確かだった。

 ページ数と掲載する写真の数も決まっていて、あとはその写真を選ぶだけ。でも肝心なその写真が、彼女の中では一向に決まらないでいるらしい。

「お父さんもお母さんも、ゆっくり選んでいいのよって言ってくれたけど、やっぱり決めなくちゃいけなくて……はぁ、どうしよう」

 恵の「どうしよう」は、ここ二週間の口癖だった。夏休みが終わる前には、というのが希望であるようなのだが、あと一週間もしたら新学期が始まってしまう。