「どれもいい写真で、選べない……」
「テーマでも決めればいいじゃないか」

 同じテーブル席に腰かけていた彼方は、ちょっと苛々した声でそう言った。

「朝一から僕も手伝わされているんだぞ」

 秋山に頼まれて、先程まで顧問兼担任の小野と、四人で写真の選別を手伝っていた。どうにも前に進まないまま大人二人は職員室に戻っていってしまい、今は彼方一人が手伝わされている状況だった。

 運動部が校内で練習しているため、たまに廊下を「ふぁいと・おー」という掛け声を上げて、ぞろぞろゆっくり走っていく部活生にも気が散っている。おかげで絵描きに集中出来そうにもなくて、こうして『臨時写真部』みたいになってしまっている現状も腹立たしい。

「そう言われてもなぁ」

 のろのろと身を起こした恵が、また曖昧な発言をする。そのタイミングで、廊下を運動着の女子生徒達が「ら・ら・ら・ふぁいっおー」と小走りで進んでいった。

「いい加減にしてくれ、もう二週間経ったぞ。良い写真も沢山撮れたと言っていたじゃないか」
「うーん、でもね、前撮ったやつも良くってさぁ……」