それから二週間、彼方は恵と美術室で過ごした。

 三日ほど続いた大雨で、互いの道具を美術室に置いて登下校した事はあった。でもそれ以外に変わった日はなく、それぞれが絵を描いたり写真選別を行う毎日だった。

 動きが変わったのは教師の方だった。いつもは午後に少しだけ顔を出して終わるのに、決まった時間に美術部顧問の小野と、写真部顧問の秋山が揃ってやって来るようになった。おかげで恵は写真の事を熱く語り、彼らと三人のお喋りはいつも数十分に及んだ。

 なんでこうもべらべらと喋れるんだろうな、と彼方は賑やかな談笑が少し鬱陶しかった。たびたび話しかけられるのが嫌で、キャンバスの裏に『集中作業中』という紙を貼ったりした。

「あと一週間で夏休みが終わりなんて、有り得ないわ」

 その日は、午前中から嫌な曇り空が広がっていた。午後になって天気予報通りの雨になり、すっかり作業の手を止めていた恵が疲れ切ったような声を上げた。彼女は机に両手を伸ばしてだらんっとしており、時々バケツをひっくり返したように窓を叩きつける雨を見ている。