どのくらい集中していただろうか。
ふっと描き終えた事を自覚して、彼方は我に返った。
顔を上げて時間を確認してみると、まだ一時間も経っていなかった。息を吐き出して、全身から力を抜きながら椅子に背を預けた。ギシリと軋む木音を聞きながら、鉛筆画を眺める。
スケッチブックいっぱいを使って仕上げられた絵は、土汚れがついた野球制服の二人の少年が描かれていた。泣き笑いの表情や触れ合う腕や手の感じは、今にも声や熱気が伝わってきそうなほどだった。
その時「ただいまぁ」と充実を滲ませた声を上げて、恵が戻ってきた。六個の机からなるテーブル前の椅子に腰かけた彼女は、満面の笑みで「ちょっと聞いてちょうだい!」と彼方を見たところで、ハタと止まって小首を傾げた。
「どうしたの? 休憩中?」
「……うん、そう」
彼方は窓の方へちらりと目を向けて、少し見える青空を眺めながら言葉を返した。すると恵は、少し納得いかないように顔を顰める。
ふっと描き終えた事を自覚して、彼方は我に返った。
顔を上げて時間を確認してみると、まだ一時間も経っていなかった。息を吐き出して、全身から力を抜きながら椅子に背を預けた。ギシリと軋む木音を聞きながら、鉛筆画を眺める。
スケッチブックいっぱいを使って仕上げられた絵は、土汚れがついた野球制服の二人の少年が描かれていた。泣き笑いの表情や触れ合う腕や手の感じは、今にも声や熱気が伝わってきそうなほどだった。
その時「ただいまぁ」と充実を滲ませた声を上げて、恵が戻ってきた。六個の机からなるテーブル前の椅子に腰かけた彼女は、満面の笑みで「ちょっと聞いてちょうだい!」と彼方を見たところで、ハタと止まって小首を傾げた。
「どうしたの? 休憩中?」
「……うん、そう」
彼方は窓の方へちらりと目を向けて、少し見える青空を眺めながら言葉を返した。すると恵は、少し納得いかないように顔を顰める。