彼方はちらりと彼女を見やり、それから絵の道具が置かれているロッカーへと向かった。

「しばらく部室が一緒になるかもしれないって、君は知っていたのかい」

 歩きながら尋ねてみると、こちらを目で追いかけてくる恵の方から「ううん」と返答があった。

「私も今日知ったのよ。他に使えそうな部屋を探すつもりではいるけど、ひとまずしばらくは美術室にお願いねって言われたの」

 背中からかかる声を聞きながら、ロッカーを覗き込んで「そう」とだけ言った。そこから物を取り出していると、恵が少し困ったような笑みを浮かべながらこう続けてきた。

「あなたには悪いと思ってるんだけど、写真集に載せる写真の選別をしなきゃいけないから少しスペースも必要で。じゃあ広いし一人しか部員がいない美術室が一番かなぁって事になったというか……うん、私も秋山(あきやま)先生に聞いた時は、びっくりしちゃったというか」

 どこか言い訳のように、ごにょごにょと説明してくる。