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 週が開けた月曜日、彼方はいつものようにまず職員室へ向かった。美術室の鍵を受け取ったところで、それがスペアキーの一つであり、写真部と美術部の部室がしばらく共同になる事を知った。

 放送室の隣は、これから放送大会に向けて練習場になるらしい。どうやら恵がほとんど部室を使っていない事も要因して、顧問同士で勝手に話が決定したようだ。

「お前たちの仲が良い事は知っているよ。だから、しばらくは一緒に頼むよ」

 美術部の顧問であり、現在も担任である小野がウィンクを一つしてそう言った。彼方は何も言わなかった。言い返そうと思ったのに、どうしてか否定の言葉は出て来なかった。


 美術室へ行くと、すでに鍵が開けられて空気の入れ変えがされていた。

 窓は全て開けられていて、括られたカーテンが風にはためいている。一緒に稼働している冷房機の冷たい風が、熱気と一緒に室内を駆け廻っているのを肌で感じた。


「あ、彼方君。おはよう」

 窓の外を見ていた恵が、振り返りざま元気そうに声を投げかけてきた。