「君、写真部は部室がないのかい」
「放送室の隣なんだけど、資料臭いんだもの」
何気なく尋ねると、あっさりそんな返事があった。
たった数枚の連続撮りで満足したのか、彼女がカメラを降ろした。しばらく窓の外を眺めている後ろ姿を、彼方は筆を持ったままとくに理由もなく見つめていた。
風に揺れる二つ結びの髪、薄いブルー色のセーラー服。斜め上から差し込んだ太陽の光が当たった彼女の髪が、栗色に光って揺れているように見えた。
外を眺める彼女は、どんな表情をしているのだろう。
その顔を見たいと不意に思ってしまい、彼方は恵から視線をそらした。どうしてそんな事を思ったのか、分からなかった。ただ、目が離せなくなった一瞬を疑問に思う。
熱気を含んだ風が美術室を舞っていた。切り離されていた空間が、途端に外の世界と繋がって同じ一つになったようだった。外を走り回る生徒達の表情一つ一つが、目を閉じれば瞼に裏に浮かんでくる気がして、そんなのは錯覚だと思って絵に色をつけていく。
「放送室の隣なんだけど、資料臭いんだもの」
何気なく尋ねると、あっさりそんな返事があった。
たった数枚の連続撮りで満足したのか、彼女がカメラを降ろした。しばらく窓の外を眺めている後ろ姿を、彼方は筆を持ったままとくに理由もなく見つめていた。
風に揺れる二つ結びの髪、薄いブルー色のセーラー服。斜め上から差し込んだ太陽の光が当たった彼女の髪が、栗色に光って揺れているように見えた。
外を眺める彼女は、どんな表情をしているのだろう。
その顔を見たいと不意に思ってしまい、彼方は恵から視線をそらした。どうしてそんな事を思ったのか、分からなかった。ただ、目が離せなくなった一瞬を疑問に思う。
熱気を含んだ風が美術室を舞っていた。切り離されていた空間が、途端に外の世界と繋がって同じ一つになったようだった。外を走り回る生徒達の表情一つ一つが、目を閉じれば瞼に裏に浮かんでくる気がして、そんなのは錯覚だと思って絵に色をつけていく。