意気込んで「にしししし」と笑う恵に、彼方は抑揚なく言葉を投げた。

 それに対して、彼女は早速というように動き出すと、教室の奥に引っ込められている椅子へと向かう。

「願望だけじゃなんにもならないの、必要なのは行動力よ!」

 言いながら引っ張って来て、彼方の向かい側に椅子を置いた。そこにパンフレットを丁寧に置くと、またしても突拍子に気が向いたみたいに、首からさげたカメラを片手に持った。パッと動き出すと、窓側へと向かい――。

 ガラガラ、と音を立てて窓を開けた。

 解放されたそこから、外の強い熱気に乗って、沢山の生徒達の声や歓声も入ってきた。筆先から垂れた滴が、風のせいで膝の上ではなく、斜めにずれて床に色を落とす。
 彼方はそれを見届けると、チラリと眉を寄せて「おい」と窓側へ目を向けた。

「窓を開けていいなんて言っていないけど」
「開けちゃ駄目なんて言われてないわよ」

 カメラを構えたまま、恵がぴしゃりと言い返していくつかシャッターを切った。