好きだ、好きだと僕は泣いた

 泣いても泣いても涙は止まらず、もう想いすら言葉には出来なくなって咽び泣く。

 君が好きだ、人が好きだ。

 でも僕は、きっと君の事を一番に知りたかったのだと思う。

 僕は知らなかったのだ。こんなにも命あるものが愛おしいなんて、ただただ子供だった捻くれ者で鈍い僕には、ここにくるまで気付けないでいたのだ。

 泣き続ける彼方の泣き声をかき消すように、雨はまた一段と強くなった。彼方の声は次第に小さくなり、力尽きたように項垂れた時には、その口からは小さな嗚咽ばかりが続いた。

 不意に、まるで恵自身が告げるかのように、彼が知っている彼女の声が本の一文を脳裏に綴った。ただ涙ばかりが頬を伝う中、彼方は顔を上げて窓の向こうを見やった。


――私はきっと、はじめて見た時から、あなたがずっと好きだったのだと思う。


 彼方は、本の中にあったメッセージを思い返した。溢れ続ける涙を止める術も知らないまま、そっと静かに目を閉じる。

「…………僕はきっと、君と居ても嫌じゃなくなっていた日から、とっくに君の事を好きになっていたのだと思う」

 口に出されたその言葉(こたえ)は、震えながらそれでもひどく優しげな声色で、涙と一緒になって本の上に零れ落ちていった。