好きだ、好きだと僕は泣いた

『彼方君へ

 前に私が彼らを好きで、それでいてすごく興味を持っているって言ったよね?
 でもね、やっぱりはじめから、私にとってあなたが一番だったような気がするの。
 先生たちに無理を言って、あなたと過ごせた短い時間、すごく楽しかった。

 夢のような一時をありがとう。

 ここにいればいいって言われた時、すごく嬉しかったよ。
 これからも隣にいられれば、どんなにいいだろうかって想像した。

 私はきっと、はじめて見た時から、あなたがずっと好きだったのだと思う。

                   宇津見 恵より』


 彼方は床に座り込んだまま、全身の力が抜けていくのを感じた。それとは逆に胸の内側に熱いモノが巻き起こって、息を呑むようにして溢れ出しそうになる想いを押し込む。心臓や肺だけでなく、熱くなった目からも何かが溢れそうになって曇天の雨空を見上げていた。

 ああ、僕もひどく人が好きで、僕は彼らの事をもっと知りたいのだ。

 押さえきれない熱が胸の内側で膨らみ続け、前触れもなく彼の視界は滲んだ。そう言葉として喉元に出かけたのに、実際に出てきたのは情けなく震えた己の泣き声だけだった。

 彼は空を見上げたまま、大声で泣き出した。滲んだ灰色の視界に映る雨さえも愛おしく感じて、胸が震えるままに想いのたけをぶつけて、嗚咽を上げ、本を抱きしめた。

 好きだ、好きだ。僕は君の事も、もっと知りたかったのだ。

 彼方は、外に響く雨音に遮られた室内で、好きだ、好きだ、もっと君のそばにいて君を知りたかったのだと、ただただ泣きじゃくりながら叫んだ。生まれて初めて、大人びた少年の印象を打ち砕くように表情を歪め、ただの子供のようにみっともなく泣いた。