好きだ、好きだと僕は泣いた

「……先の向こうも、何も見えない」

 膝の上で広げた本の、最後のページへ進めないまま庭の方を見つめていた。見慣れたはずの庭はすっかり風景を変え、彼の家の中と外の世界を切り離してしまっているかのようだった。

 あの花は、散ってしまわないだろうか。

 そんな事を想った彼方は、胸が静かに締めつけられるような痛みを覚えて目を落とした。本を支えている左手も、本の上に置いている右手も、まるで心臓と繋がっているかのような同じ痛みを感じていた。

 開いたページに写る四人を眺めた。乾いた目が痛むようにして目を細めると、浅く息を吸い込んでから、彼はゆっくりと最後のページを開いた。

 そこには、写真のない見開きページが待っていた。右側に、崩れた丸字で文字が書き綴られてあった。

 彼方は一瞬、呼吸する事も忘れて小さく目を見開いた。その字を食い入るように見つめ、読み進め、次第に目を細めて、――くしゃりと鼻と目尻に悲痛な皺を寄せた。