好きだ、好きだと僕は泣いた

『元々作る予定だった写真集とは別に、特別に二冊作ってもらいました。一つは私がもらうけど、もう一冊は彼方君に渡します。それが、私からの【交換用の作品】です』


 可愛らしい丸字で、そう書かれてあった。

          ◆◆◆

 彼方は、まるで割れ物でも扱うかのように二冊を置いた。まずは彼女が夏休み当初から、ずっと作ると意気込んでいた写真集を手に取った。


『私の宝物/著:宇津見恵』


 そうタイトルがデザインされた表紙には、校舎の窓から撮られた青空の写真がプリントされてあった。彼方はゆっくりと指先を滑らせて、ページをめくり一枚一枚を見ていった。

 写真は、家族との物から始まっていた。赤ちゃんの恵を優しげな顔で抱く女性と、名が描かれた紙を嬉しそうに見せている男性。それを筆頭に、恵の今に至るまでの写真が並んでいたかと思うと、続いては彼女が撮ったらしい地元の風景写真のページになった。

 見覚えのある道や商店街、交差点や住宅街の風景。

 そこには多くの人々の姿が写し出されていた。好奇心旺盛で表情豊かな子供たちが、自らカメラに写り込んでいる写真もあった。散歩している女性がはにかむ写真からは、恵が「一枚撮ってもいいですか?」と言った直後、勝手にシャッターを切る姿を容易に想像させた。