好きだ、好きだと僕は泣いた

「俺は、何も出来ない自分が悔しいよ。勉強を教えて、話をするくらいしか出来ない。彼女は覚悟も心構えもあって、せいいっぱいの希望と勇気を持って臨んでいるのに、俺は彼女の無事を信じて待つ事も苦しくてたまらない」

 思わずといった様子で、普段学校で使っている「僕」ではなく、「俺」と口にする秋山は印象が少し違っていた。それが気取らない本来の彼なのだろうと察した彼方は、ああ、と思った。


――『嗚呼、ただただ人間らしさがそこにはあるのだ』


 画家の誰かが、そう本に書いていた一節を思い出した。

 その途端、得体の知れないモノが内側から溢れ出てこようとした。痛いほど胸が打ち震える感覚と、喉元までせり上がった感情的な言葉に恐怖を感じて、彼方は一歩後ろにさがっていた。

「お願い、もう帰って」

 泣き顔に涙を堪えた秋山から距離を取り、咄嗟にそう言葉を掛けていた。

 苦しそうな顔をした秋山に見つめ返され、ますます訳の分からないモノが身体の内側を暴れ出す。その息苦しさにくしゃりと眉を寄せると、顔を横に振ってこう続けた。