好きだ、好きだと僕は泣いた

 昨日の先生達の話を思い返して、ただひたすら冷静に考える。

 一般的に知られている治療成功率から言えば、恵は高い確率で助からない。手術がいいように進めば、病院で治療を続けながらの延命が少し叶う。そして僅かな可能性で、奇跡のような事が起こりでもしたのなら、退院も叶ってまた走れるようになって残りの人生を……――。

 彼方は、自分が大人びた少年だと自覚していた。知り合いの死は初めてではない。それでも恵の事は遠い世界のどこかの話のようで、大きく深呼吸をしたら心が沈んでいった。

 その後しばらくして、秋山の訪問があった。

「呼び鈴を押して、もし君以外の人が出てきたらどうしようかと緊張してしまった。小野先生からも話は聞いていたけど、うん、びっくりするくらい大きな家だ」

 門扉をくぐり、少し距離がある玄関までやってきた彼が、ぎこちない笑みを浮かべてそう言った。家の場所は、担任の小野に聞いたらしい。

「元気がないんじゃないかと、心配したよ」
「別に。――これ、僕が描いた絵が入っています」