「ただいまぁ。」

と誰もいない空間に声を放つ。

「……おかえり…。」

と返してくれないのが悲しくて、自分で返事をする。そして、手洗いうがいと着替えを済ませて、すぐに作業に移る。僕は机に向かって書き続ける。でも納得がいかなくて、その紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱のある方めがけて放り込む。また1枚紙を引っ張り出してしばらく書き進めるが、また訳が分からなくなった。その紙もくしゃくしゃに丸めて、同じ方向に捨てる。しかし、どちらの紙も、ゴミ箱の上に成り立っているゴミの山に跳ね返されて床に転がっていた。そのことに気づいた僕は、そろそろゴミ出しに行かなきゃ、とても作業に集中できないと思った。その辺にあった付箋に

「6/26 ゴミ出し」

と書いて壁に貼る。さほど進んでもいない作業が一段落したので、いつか二人で聴いた曲をイヤホンで聞くことにした。

「僕らの友情は永遠(とわ)に いつまでも二人笑っていよう」

曲の最後のほうを少し口ずさんでしまった。そのことに気づいた僕は音楽を止め、風呂に入った。


「はぁぁ。風呂上がりの炭酸はしみるねぇ…。」

と、有名な炭酸の清涼飲料を一気飲みして、柄にもないことを言ってみる。そうだ、アルバム。あれを見れば何か思い浮かぶかもしれない。そう思った僕は、本棚から大きくて分厚い一冊のアルバムを取り出し、1ページずつ見始めた。