夕方の教室。その最後列の一番窓側に座り、放心状態の僕に、彼女は優しい笑顔で、芯を持った声で、僕に言う。

「もう、泣かないでよ〜!きっとまた会えるから、ね?」

そう言う彼女は涙を流していた。
もう彼女はいなくなってしまう。
僕の前から、いなくなってしまう。
行かないでほしい。ずっとそばにいてほしい。そう願ってしまうのは、おかしいのだろうか……。


目を覚ます。天井。カーテン。止まった扇風機。そして、窓から少しだけ入ってくる太陽の光。

「あぁ、夢か……。」

そう小声でつぶやいて、僕は体を起こす。
本当は気づいていたんだ。夢であることに。それでも僕は、それを現実だと思い込んだ。自分がまだ子供だからだ、と自分に言い聞かせる。自分がまだ子供だから、夢を現実だと思いこんでしまうのだ。
今は朝の6時半。そろそろ支度を始めないと学校での朝勉ができない。

「出るか。……よし。」

自分の両頬を少し強めに叩いて、支度を始めるべく、ベッドから腰を上げた。