片腕を失くした対地上用戦闘機MR6のスピーカーからは、独り言のように、マルクの小さな声が流れ続けていた。

『……彼女の人生をやり直させてやるんだ。私があの時、買い物なんて頼まなければ、彼女は死ぬ事などなかったのだ』
「ただの妄執ですよ。あなたの前に現れたのは、あなたの知っているエリスではなかったのですから」

 憐れですねぇ、とエルが他人事のように胡散臭い口調で告げたが、マルクは『彼女は死んでいなかったんだ』『ここにいて私を頼って来たのだから』と、壊れた人形のように言葉を続けた。

「おや、こちらの声も聞こえなくなってしまいましたか。まぁ、この男が巻き込まれて死んでしまうのであれば、問題もないですし?」

 エルの顔をしたホテルマンが、興味も無くしたように肩をすくめ、労わるように控えめにら身体の動きを確かめ始めた。骨や神経に大きな損傷はないが、切り傷や擦り傷、打撲が数か所出来てしまっているようだ。長時間経てば、それは身体を動かすたびに痛みだすだろう、と冷静に推測する。