そして、卒業式典から3日後。国王は宣言通り騒ぎの元凶のシルヴァンとレイン、アッシュレイ公爵とトラバルト子爵。カテリーナとシルクレイド公爵、そして…自身の息子となるデイヴィットを呼び出していた。
空気を読めていないのか、レインはシルヴァンの腕にべったりと張り付いている。シルヴァン自身は引き剥がそうと試みていたのだが、レインに泣かれそうになり、引き剥がすことを諦めたという経緯があった。
アッシュレイ公爵は一人掛けの椅子に座り、シルヴァンとレインの様子に腹を立てている様子が伺い知れる。腹を立てているのは、シルヴァンの対応に対してのようだ。トラバルト子爵はその隣の一人掛けの椅子に座り、ハラハラとしながらその様子を見ているだけだった。
その二人とは反対側に座るのは、デイヴィットとカテリーナとシルクレイド公爵。もちろん並びはデイヴィット、シルクレイド公爵、カテリーナの順となっている。その辺りはきちんと配慮しており、レインとカテリーナの違いがハッキリと浮き上がった構図だ。
遅れて国王が部屋へと入ってくる。レイン以外は速やかに立ち上がり国王陛下へと頭を垂れた。
何テンポか遅れてレインも見様見真似で国王陛下へ頭を下げる。その姿を確認後、国王は席に着くよう促した。
「此度の騒ぎについて、アッシュレイ公爵とトラバルト子爵の考えを聞きたい」
威厳のある声が部屋に響き渡る。
「アッシュレイ家としましては、このような者に家督を譲るわけにはいきませんので、嫡子とはいえ追放します。その上で次男のフェルナンドにきちんと家督を相続させる為の教育をしていく所存にございます」
「トラバルト家は………我が家は……………」
先に口を開いたアッシュレイ公爵に続き、考えを述べようとしたトラバルト子爵。しかし、先を話すことが出来なかった。膝の上に置いた拳が震えている。
「娘、レインを…お許しいただけないでしょうか?不躾な願いだと理解しております。ですが、ですが…晩年に漸く授かった子供です。どうか、どうか…ご慈悲を…」
突如椅子から立ち上がり、床に額を擦り付けて懇願した。レイン以外のその場にいた人間は祖父…或いは父親程の年齢の男性が、階級が上とはいえ年下の者に頭を下げる姿に胸が痛む。
しかし、当人が何が良くなかったのかを理解していないのだ。同情心だけで許すのは簡単だが、もうすぐ成年になる者としてのけじめを付けさせるべきだと誰もが考えた。
「トラバルト子爵、許すのは簡単です。しかし、甘やかすだけが親の仕事ではないのですよ?時に厳しく叱責するのも親の仕事なのですから」
声を掛けたのはシルクレイド公爵だった。その言葉に堰を切ったように泣き崩れるトラバルト子爵。