リリーは猫の姿のまま光輝く道を流れるように進んでいた。その隣に妖精が並走する。

「救済者の仕事は完了したよ。………ご主人、今回はやけに(・・・)長かったね」
【まぁね。続編と呼ぶべきイレギュラーも合わせて潰さなきゃいけなかったから、想定よりも時間がかかったわ】

妖精の名はキラ。白く輝く光のようだからとリリーが名付けた。

「それにしても…まだ猫のままなの?ご主人」
「煩いわね、好きなのよ」

リリーはキラに指摘され、人形に戻った。黒髪に紅い瞳が印象的な美少女に。

「それよりもキラ?頼んだ方はどうなったの?」
「あぁ、あの物語に入り込んだ(・・・・・・・・)ヤツでしょ?ちゃんと排除したから大丈夫。それについては、ダークに任せたし…しっかり仕事してるでしょ」
「ダークって…また仕事を押し付けたわね?」
「いいんだって。ダークはご主人の力になれるのが至上の幸福なんだから」

キラの言い分にリリーは呆れる。話に出てきたダークとはキラの双子の漆黒を思わすような色合いをしている妖精のことで、色合いからリリーがダークと名付けたのだ。

「全く…あなたって子は…」

リリーが呆れていると。

「主様」

話題に上がっていたダークが現れる。

「ダーク、お仕事お疲れ様」
「いえ。力と記憶を奪い、因果律の厳しい設定にしておきました。ただ…」
「ただ?」
「最後はキラが適当に捨ててしまったので、どんな状況かはわかりません」

ダークがしょんぼりとしていた。その頭を撫で、リリーはキラを睨む。キラは視線を逸らし乾いた笑いをする。

「キラ…」

怒気を含んだ呼び方にキラの肩が震えた。失敗を誤魔化す子供のように笑っている。

「主様、いつものこと。構われたくてしてるだけ…」
「あら、そうなの?」
「ダーク!」

顔を真っ赤にしたキラがダークを睨む。その顔を見てニヤッと笑い、ダークは「紅い顔してたらバレバレだし」とシレッとしていた。

「~~~~~っ!次、次の依頼だ」
「あ、話を逸らした」
「うるさいっ!」

キラとダークの掛け合いに少しだけ笑みを浮かべたリリー。キラの持つ次の依頼書を抜き取り目を通す。

「おふざけはここまでよ」

きゅっと顔を引き締めるキラとダーク。リリーは依頼主の元へ向かうべく進んだ。