それから程無くしてレインとシルヴァンの仲は急速に縮まっていった。学園内でも学園外でも仲睦まじく寄り添う二人が見掛けられるようになる。
その度にシルヴァンの婚約者―――カテリーナ・フォン・シルクレイド公爵令嬢が小言を言うようになった。シルヴァンは面倒臭そうにそれをあしらい、レインはカテリーナを見る度に怯え、シルヴァンの背に隠れた。
シルヴァンが冷たくあしらう度にカテリーナは一瞬泣きそうな顔を見せるが、すぐに持ち直し恭しく礼をして去っていく。
(ふふ…良い気味だわ。そうやってカテリーナは破滅していくのよ)
シルヴァンの背に隠れていることを良いことに、レインはほくそ笑んだ。
お茶会でリリアナ・ディミアンに追い出されたレインは、シルヴァンを見掛けると目に涙を溜めて抱き付いた。
「シルヴァン、カテリーナ様がヒドイんです…」
先程のお茶会での真実を湾曲させ、いかに自分が酷く追い出されたかを涙ながらに語った。途中途中でシルヴァンの表情をチラ見して、カテリーナに憤慨する様に高揚感を感じていた。
「そんな茶会等行く必要はない。これからは私と共に過ごせば良いのだから」
「シルヴァン」
レインはシルヴァンの言葉に感激し見つめた。そして、左頬に手を添えられ初めての口づけを交わす。
レインはシルヴァンと口づけをしながら、(やっぱりシルヴァンはレインと結ばれなきゃ)と考えていた。そして、カテリーナの悪行をもっともっとシルヴァンに報告しなければ…と考えるのだった。
卒業式典を明日に控え、レインはシルヴァンから送られた手紙を読み笑みを浮かべた。
「明日はカテリーナが地獄を見る日ね。ふふふ…楽しみ」
シルヴァンの手紙は明日の式典のエスコートを申し出る内容と婚約破棄をする意志があることを示していた。レインは明日の装いを確認し眠りについた。