慌ててシャッターを切ったのか、それとも本人に知られないよう自然な表情を撮影したいと配慮したのか、苦労して撮影されたらしいと窺える写真や、隠し撮りのように撮影角度が正しくないものも多々あった。
カメラ慣れしているはずの友人達が撮影したとは思えない、そんな写真が、封筒には沢山収められていた。デジタルカメラの使用に手間取っていた自分に、使い方がぎこちないと笑っていたのは、どの口だろうか?
しかし浅倉は、いつもみたいにそれを笑ってやる事が出来なかった。自然と込み上げた感情を抑えこもうと、震える呼気を呑み込んで、顔を片手で覆った。
「――……良かった、僕は、……ちゃんと笑えていたんだな」
彼女を愛していた。物心ついた頃からずっと一緒にいて、好きだと自覚するよりも前には、深く愛してしまっていたのだ。
この想いは誰よりも特別で、だからこそ浅倉は、彼女が世界で一番幸せな女の子になれる事を願った。そうやって見守り続けて、彼女が心の底から望む一人の人を見付けた事を見届けてあとに、――ずっと握っていたその手を離したのだ。
多田は視線を向けないまま、震える浅倉の肩を無造作に叩いた。
「いい結婚式だったよ」
「…………」
「ああ、本当にいい結婚式だった。本音をいうと少し悔しいけどな」
お前だったらまだ諦めはついたのになぁ、と多田は寂しげに呟いた。
浅倉は目元を押さえた指の隙間から、涙がこぼれ落ちるのを感じた。多田が口許で傾けたグラスの中で、氷が涼やかな音を立てた。
カメラ慣れしているはずの友人達が撮影したとは思えない、そんな写真が、封筒には沢山収められていた。デジタルカメラの使用に手間取っていた自分に、使い方がぎこちないと笑っていたのは、どの口だろうか?
しかし浅倉は、いつもみたいにそれを笑ってやる事が出来なかった。自然と込み上げた感情を抑えこもうと、震える呼気を呑み込んで、顔を片手で覆った。
「――……良かった、僕は、……ちゃんと笑えていたんだな」
彼女を愛していた。物心ついた頃からずっと一緒にいて、好きだと自覚するよりも前には、深く愛してしまっていたのだ。
この想いは誰よりも特別で、だからこそ浅倉は、彼女が世界で一番幸せな女の子になれる事を願った。そうやって見守り続けて、彼女が心の底から望む一人の人を見付けた事を見届けてあとに、――ずっと握っていたその手を離したのだ。
多田は視線を向けないまま、震える浅倉の肩を無造作に叩いた。
「いい結婚式だったよ」
「…………」
「ああ、本当にいい結婚式だった。本音をいうと少し悔しいけどな」
お前だったらまだ諦めはついたのになぁ、と多田は寂しげに呟いた。
浅倉は目元を押さえた指の隙間から、涙がこぼれ落ちるのを感じた。多田が口許で傾けたグラスの中で、氷が涼やかな音を立てた。