改めて思い返しても、あれは良い結婚式だった。身内と親しい友人を呼んだだけの小さな結婚式だったものの、一生に一度の晴れ舞台のために、ホテル側も予算内で出来る事を行ってくれた。

 純白のウエディングドレスを着た彼女は、人生で一番輝いて美しく見えた。心の底から、幸福さを噛みしめるような微笑みが印象的で、そこに辿り着くまでの下準備は大変だったが、浅倉は結果的に満足していた。


 結婚式の当日まで慌ただしく、時間は飛ぶように過ぎたものの、そこへ辿りつくまでの光景はほとんど見逃さなかったと思う。浅倉はその間にあった結婚の支度から当日の晴れ舞台が終わるまでの出来事を、使い慣れていないデジタルカメラに多く残したのだ。

 浅倉は昔から、思い出を形に残す事に意味合いを覚えない性質だった。例えば入学式も卒業式も、学校行事も家族のイベントも、いつもその場の空気に流されながら、半ば無理やり写真の中に収められるのが、彼の立ち位置だった。

 まさか自らの意思でカメラを購入し、説明書を読み込んで持ち歩き、撮影を行いながらも時には「僕らを撮ってくれませんか」と誰かに口にする日がこようとは、思ってもみなかった。

 浅倉は、自分の性格が淡白である自覚があった。喜怒哀楽の表現の乏しさは友人達のお墨付きで、団体行動や社交性に興味が浅く、笑い返せば「心がこもってない」「嘘っぽい」とからかわれる。

 そんな浅倉が、自然とシャッターを切った。

 彼が多くの写真を残したほど、それは素晴らしい結婚式だったのだ。