「というか、お前さ、親友である俺には教えてくれても良かったんじゃないか? 相変わらず涼しい顔して、いっつも美味しいところだけ持っていきやがるよなぁ。この憎たらしいハンサム野郎めッ」
「露骨に羨ましがるなよ。まぁ、お前の失恋に乾杯」

 浅倉は友人の想像以上の荒れ具合に同情を覚え、とりあえず半分になったグラスを掲げて見せた。

 多田が悔しそうに奥歯を噛みしめ、ハイボールを一気に飲み干した。その直後、「マスター、もう一杯!」と続いた掛け声に、浅倉は肩を落とした。

「飲むのはいいけど、酔い潰れて俺に迷惑を掛けるなよ。介抱する気はないぞ」
「簡単に酔い潰れねぇよ」

 多田は唇を尖らせ、新しいグラスを受け取る。

 手狭な店内には、浅倉と多田の他に客の姿はなかった。浅倉は友人が新しい酒に口をつけるのを横目に、ゆったりと流れる洋楽に耳を傾けた。聞き覚えのある懐かしいメロディーだったが、歌っている歌手も曲名も分からなかった。


「……でも、さ。いいドレスだったよな。彼女にぴったりだった」


 しばらくして、多田がぽつりと呟いた。

 浅倉は、思い出すような間を置いた後「あぁ」と相槌を打った。多田が、手に持ったグラスに視線を落としたまま言葉を続ける。

「さすが、お前が選んだだけはある」
「しっかり付き合わされたからな。期待には応えないといけないだろ」

 多田が「そうか」と言い、熱に潤んだ目を細めて口をつぐんだ。浅倉も、ぼんやりと自分のグラスへ視線を戻しながら、数時間前の結婚式の様子に想いを馳せた。