「はぁ、結婚かぁ」
隣に座る多田が、馴染みのカクテルBARで何度目か分からない言葉をこぼした。
結婚式の後、親しい友人達と居酒屋を三軒回った際にも相当飲んでいたが、こちらにきて数十分、多田は既に五杯目のハイボールを飲んでいた。しっかり数えていた浅倉は、そんな友人を横目にリキュールベースのカクテルを少し飲み、口を開いた。
「お前、今日はやけに絡むなぁ。なんだよ、式場でお前も『めでたい』って祝ってくれたじゃないか」
「祝福はしてるさ。でも彼女は、我らがマドンナだったんだ。そんな彼女がとうとう結婚しちまったんだなぁって思うと、どうにもやるせなくてッ」
多田はグラスを机に置き、悔しそうに言葉をしぼり出した。
美人で聡明という言葉が誰よりも似合う少女が、すっかり大人となって、今日、めでたくも世界一幸せな花嫁となって結婚した。
幼い顔立ちに清楚な美貌を持った彼女は、大学入学当時も沢山の男達の注目を集めた。のんびりとした温厚な性格に、今時珍しい純真無垢なタイプの少女は、男達の間で密かにマドンナと呼ばれていた。
いつ誰と付き合うのか、と始終周囲の関心を集めていた彼女だが、恋愛未経験で奥手なのは周知の事実だった。結局は特定の誰かと付き合うような影も姿も見せないまま、彼女は卒業していった。
そのため、大学卒業から一年も経たないうちに知らされた彼女の結婚は、未だに淡い恋心が忘れられない男達にとって衝撃的であったらしい。
「一体いつからなんだッ? 彼女はいつから大人になってしまったんだ!」
「大学の三年生になったあたりかな」
「ちくしょーマジかよっ、全然気付かなかったぜ!」
思わずといった様子で、多田が目を剥いて隣の彼を見た。
隣に座る多田が、馴染みのカクテルBARで何度目か分からない言葉をこぼした。
結婚式の後、親しい友人達と居酒屋を三軒回った際にも相当飲んでいたが、こちらにきて数十分、多田は既に五杯目のハイボールを飲んでいた。しっかり数えていた浅倉は、そんな友人を横目にリキュールベースのカクテルを少し飲み、口を開いた。
「お前、今日はやけに絡むなぁ。なんだよ、式場でお前も『めでたい』って祝ってくれたじゃないか」
「祝福はしてるさ。でも彼女は、我らがマドンナだったんだ。そんな彼女がとうとう結婚しちまったんだなぁって思うと、どうにもやるせなくてッ」
多田はグラスを机に置き、悔しそうに言葉をしぼり出した。
美人で聡明という言葉が誰よりも似合う少女が、すっかり大人となって、今日、めでたくも世界一幸せな花嫁となって結婚した。
幼い顔立ちに清楚な美貌を持った彼女は、大学入学当時も沢山の男達の注目を集めた。のんびりとした温厚な性格に、今時珍しい純真無垢なタイプの少女は、男達の間で密かにマドンナと呼ばれていた。
いつ誰と付き合うのか、と始終周囲の関心を集めていた彼女だが、恋愛未経験で奥手なのは周知の事実だった。結局は特定の誰かと付き合うような影も姿も見せないまま、彼女は卒業していった。
そのため、大学卒業から一年も経たないうちに知らされた彼女の結婚は、未だに淡い恋心が忘れられない男達にとって衝撃的であったらしい。
「一体いつからなんだッ? 彼女はいつから大人になってしまったんだ!」
「大学の三年生になったあたりかな」
「ちくしょーマジかよっ、全然気付かなかったぜ!」
思わずといった様子で、多田が目を剥いて隣の彼を見た。