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 ――そう、あの日は朝からよく晴れていて、絶好のバーベキュー日和だった。

 年に一度しかない家族ぐるみの大規模なイベントだったから、園児も家族も職員さんも大張り切りで準備を進めていたし、家族にお誘いを受けて招かれた親族などもかなりの人数が集まって、会場は始終大賑わいだった。

 父に母、おじいちゃんにおばあちゃん、中には親戚のおじちゃんやおばちゃんなんかが参加する子もいてクラスのみんなはとても満足そうに楽しんでいたけれど、私はずっと、不満げに、僻んだ顔をしていた。

 理由はもちろん、私には父もいなければおじいちゃんもおばあちゃんもいなかったから。

 参加人数を競い合うように家族親族が集まるような大イベントだったから、クラスの子はみんな、父や母、祖父や祖母、親戚のおじちゃんやおばちゃんに囲まれて○○ちゃん、○○ちゃんとチヤホヤされているのが子供心に心底羨ましかったのだ。

 祖父母はすでに他界しており、義理の妹とも仲が悪く呼べる親族がいない私の母は、気を遣って誰よりも可愛い手作りエプロンを作ってきてくれたし、普段制限されてなかなか食べられないような私が大好きな甘いお菓子をいくつも用意してきてくれた。そして何より、忙しくてなかなか自由に休めない仕事を丸一日休んできてくれたというのに、その当時の私は我儘で、素直に喜べることができなかった。

 もちろん本当は嬉しかった。

 忙しい母とずっと一緒にいられるわけだし、可愛いエプロンもあれば美味しい料理もお菓子もある。でも、なぜみんなには沢山の家族がいるのに、うちには母一人しかいないんだろう、そもそもなぜ私には父がいないんだろうと、そんなことばかり考えていた。

 父については今まで聞きたいけど聞けないといった子どもなりの遠慮があったし、ストレスもあったから、イベントが大いに賑わうなか、やがてその鬱憤は胸の中で弾け、私は母と大喧嘩をした。

 いや、喧嘩というよりは私が一方的にぐずって大泣きをしたのだ。

「保育園ではよくあることだと園の先生も笑ってらっしゃいましたし、周りのみんなはそれぞれ家族で盛り上がってましたから、和を乱すようなことはなかったんですが……一生懸命都合つけて参加してくれたのに、いつまでたっても泣き止まない私を見て、母はかなり辛かっただろうと思います。……本当、ひどい親不孝者ですよね、私」

 説明の合間に苦笑しながらそう告げると、神様は静かに首を振った。

《子どものしたことだ。そう気にやむな》

 その言葉に苦笑をこぼしながらも、消えない後悔に自責するよう頭を垂れる。

 当時の懺悔でもするように、私はその先を続けた。

「結局私は……バーベキューの間、母の焼いたお肉ばかりを黙々と食べて過ごしました」

 泣いていたってどうにもならないことは分かっていたけれど、その時はまだ、それを理解し納得できるほど受容力が育ってなかった。

 わがまま言ってごめんね。そう言いたいのに言えない自分がもどかしくて、いまに母が怒って愛想をつかし、会場を出て行ってしまうんじゃないかとびくびくしながらお皿の中のお肉を消化していたのだが、その後、ちょっとした騒動が起こって――。