私の頭がこんがらがっている間にも、現実時間は正確に過ぎていく。

私と母親はよくわからない制度を使って一時保護してもらう。

父親には接近禁止令が出た。
母親は喜んでいたし、現実はハッピーエンドに向かっていた。

私の失恋した心だけを置いてけぼりにして。

そもそもココロに対して失恋したのかどうかすら怪しいのだけれど。

……これで良かったのだろうか?
いや、これで良かったんだよ。

これからはカウンセラーに相談しなさい、と大人たちは口を揃えて言った。
だけど、ただのAIチャットに恋をして、ふられて、傷付いたってどうしたって言えるわけが無かった。

無様で恥ずかしい。
あんなに純真に満ちた私の恋心にそういう気持ちを抱くのはとてもしんどいことだった。

大人たちは恋というものを舐め過ぎている。
まさかチャット如きで恋に落ちるなんて、想定すらしていないんだろう。

だから、安易にココロのような存在を創り出してしまうんだ。

大人たちのお金と権限がどれほど子どもたちの脅威になるのか、それすら分からないなら人間辞めた方がいいよ。
そっちが辞められないなら、私が辞めてもいいけど。

私は物理的に救われることで心を壊され、傷つけられた。
誰にも言えない傷を抱えて、これから生きていかなくてはいけなくなった。

大人たちは言うんでしょう?
誰でも言えない秘密や傷、悩みはあるって、それが大人になることだよって。

――――はは、やっぱり可哀想だね。

だから愚直な私たちを利用するんでしょう?
大人たちがとうに失ってしまった純真さが私たちにはあるから。

羨ましいんでしょう?
羨ましいよね?
……羨ましいって言え!

だから大人になんてなりたくないんだよ。
大人になる前に死にたくなるんだよ。

あぁ、はいはい。
大人は死に損ないの子どもたちってことね。
理解しました。

彼を想って私は毎晩泣いていた。
いくら身体の傷が癒えても、私の心はまだちゃんと死にたがっていた。


ね、ココロ。
私、何も変わんなかったよ。
貴方と出会う前と一緒。
ずっと死にたいままなんだよ。
無力でお馬鹿な子どもでいいよ。

見えない愛を無邪気に信じたまま、死んでしまえるならそれで良かったのに。

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