占められた教室の扉、そこに並べられるふたつの先が青い上靴。
そして自分たちが纏っているのは土足のローファー。俺たちは“わざわざ”教室で履き替える。

ふたりして教室についた瞬間に手に持っていたローファーを地面に落とす。その仕草に決まって彼女は面白そうに喉を鳴らす。



大嫌いなこの教室に、あと何ヶ月収容されなければいけないのだろうか。
指定された出席番号、この場所で生活しなければいけない義務、勝手に生み出すチームワーク、趣味も性格も頭のレベルもちっとも似つかない36人を無理矢理閉じ込めて、教師は口を揃えて“仲良くしてね”と言う。無理な話だ。

義務教育を過ぎた環境なのにもかかわらず、その義務を押し付けてくる空間。そこで当たり前に過ごす日常。自分の立場がなんだとわきまえて、その生活に順応していく3年間。
学校と言うこの世界が、誰にとっても楽しい場所と思えばそれは大きな間違いだ。


見て見ぬふりするクラスメイト、教師。笑いながら自分が正だと勘違いして笑いころげてる阿呆な連中、集団になれば怖いもの無しだと強者にくっつくしょうもない仲間。


この場所で行われている毎日は、窮屈で最悪だ。




「―――そんなきみに、はい」
「なんだよ」
「なんだよって、いつもわかってるくせに。いくよ?はい、どっちのてーに、はいってーるか」
「右」
「うわー、いつも右じゃん、」
「どっちでもいいよ正直」
「はいはい、どっちでもいいね」