教室での絶対的決定権を持って、へらへら笑って全員の中心に立つ。
絵にかいた美男美女のカップルと慕われて、自分たちの存在があたかも強者であるように振舞う。

そんなお前に何がわかるんだ、なんて、繕うのをやめて歪んだ表情を見せた彼女には、言えない。



「……泣きたいなら、泣けばいいじゃん」
「――――……」
「でも俺は、泣かねえよ。白鳥はよわむしだから泣くけど、俺は違う」
「……うん、そうだね」
「――――でも、」


白鳥咲良のことは嫌いだ。
みんなに良い顔して好かれることに必死で、自分の過去を隠して、偽りの自分で人気を獲得して。知らない顔して、のうのうと生きてる。

その仮面を全部剥がして、誰にも見せない弱みを晒して、俺の前で泣く白鳥咲良は嫌いじゃない。



「大笑いしてやるよ」
「――――………ッ」
「バカだなあ、あいつら。しょうもねえな、本当に。白鳥、今日もあんな無理して笑ってんの、マジできしょいな」
「――――、」
「お前ら全員、大好きな白鳥咲良の本音知らないなんて、カワイソウだな。そう思いながら、こころの中で笑ってやるよ」



学年一番の美女、成績優秀、部活での功績、募る人気、絶対的信頼感。
口を揃えてこの学校のやつらは「白鳥咲良は最強だ」と言う。


「あいざわ、」
「なに?」
「―――わたしも、笑ってあげる」
「………」
「一緒にさ、ふたりで大笑いしよう」