「―――もう、誰かに嫌われるのはいや」
「……よわむし」

「そうだよ、藍沢みたいに、強くはなれない」



だから、共犯になる。
だから、わかりあってあげたいと思う。

誰かに嫌われて、誰もに嫌われて。
一人ぼっちになって、誰に助けを求めても応えてくれない。


あんな気持ち、もう二度と味わいたくない。
なのに私は結局、あの場所で藍沢を助けることができない。

わたしは、よわむしだよ。ごめんね。
相変わらずへらへらと笑って、彼女は消えない過去を話す。



彼女が積み上げてきた完璧の裏側を知る人はこの場所にはいない。
白鳥咲良が中学生の頃酷いいじめに遭っていたと知ったら、彼女を崇拝しているやつらはどう思うだろうか。過去の写真を見て、過去の彼女を見て「アリエナイ」と非難して離れていくのだろうか。


いじめられる側にも原因がある?
そんな馬鹿みたいなこじつけ、誰が言ったんだ。

何もできない、
何もする気にもなれない。

何で助けを求めない?
求めたところで、助けてくれる奴なんかいない。

教師は教室の異様な空気に見て見ぬふりをして、いざ誰かにこれがイジメだと告げられたら「全然気づいてあげれなくてごめんね」と偽善者ぶるのだろう。

教師なんて信用できないよ、可愛くて話しやすくてみんなから好かれている子に好かれることしか考えてないんだから。
まるで自分がそうだったかのように、彼女は教師を非難する。


見ないふりをされて、言葉は見えないから、全部知らなかったことにする。
身体が傷つけられるよりも、この場所にいるすべての視線から“ないもの”として見られる方がよっぽどきつい。

じゃあもうここに自分は必要ないと、諦めることを諦めて。
死にたくなっても、それが一番の逃げで負けだとわかっているから、それでもしがみついて、必死に生きている。