でも、この時の静香は、俺がじぶんに一目惚れしたことも、
二十四から一筋に愛してくれた事も信じられずにいた。

それから俺が静香の病室へ行くと、疲れているからと話が出来ない日々が続いた。

そう言えば、仲良くなるまで時間かかったっけ。

いきなり、夫婦ですって言われたって、無理だよな。

俺と静香の関係はすっかりスタートラインに戻った。

静香は退院の許可が降りた。

「静香、俺と静香と翔太が暮らしていたマンションへ帰るよ」

「あのう、真壁さんにお世話になる訳には行きませんので、アパートを探します」

「何言ってるの?俺達夫婦だし、静香は翔太の母親なんだから、一緒にいる方が
記憶の回復にいいと思うけど……」

「それなら、翔太くんと一緒にアパートに住みます」

そう簡単ではないと思ってはいたが、静香のこうと言ったら引かない性格を
改めて再認識した。

「分かった、翔太も幼稚園の事もあるし、アパート借りるのも大変だから、俺が会社に寝泊まりするよ」

「それじゃあ、申し訳ないです」